「ご承知おきの程よろしくお願い致します」は失礼?意味・使い方・言い換え完全ガイド

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ビジネスメールで頻繁に見かける「ご承知おきの程よろしくお願い致します」というフレーズ。
一見、丁寧で無難な敬語のように思えますが、実は使い方次第では相手に失礼な印象を与えることもあります。
本記事では、この表現の意味と文法構造、使ってよい場面と避けるべき場面、代替表現や業界別の適切度までを詳しく解説します。
さらに、実際のメール例文や海外ビジネスでの言い換え方法も紹介し、場面に応じた最適な言葉選びができるようになることを目指します。
敬語の正しい理解と柔軟な運用を身につけて、より円滑なビジネスコミュニケーションを実現しましょう。

この記事でわかること

「ご承知おきの程よろしくお願い致します」の意味と文法構造

この章では、「ご承知おきの程よろしくお願い致します」というフレーズがどのような意味を持ち、どのように構成されているのかを、文法的・敬語的な観点から丁寧に解説します。
ビジネスメールで頻繁に使われる表現ですが、実は敬語の要素が複雑に絡み合っており、正しく理解していないと相手に誤解を与えることもあります。

フレーズの成り立ち(ご承知おき/の程/よろしくお願い致します)

「ご承知おきの程よろしくお願い致します」は、3つのパーツに分解して考えることができます。

要素意味敬語の種類
ご承知おきあらかじめ知っておく、心に留めておく尊敬語+謙譲語的ニュアンス
の程〜していただけるように、という婉曲表現丁寧語
よろしくお願い致します配慮・協力を依頼する謙譲語+丁寧語

特に「おき」には「そのままにしておく」という持続的なニュアンスがあり、単に「承知してください」よりも、継続して覚えておくことを求める意味合いが強まります。

敬語要素の分解とレベル感

このフレーズは尊敬語・謙譲語・丁寧語の混合型です。
尊敬語の「ご」、謙譲語的ニュアンスの「承知」、依頼を柔らかくする「の程」、そして謙譲語+丁寧語の「お願い致します」が連なり、全体として中〜高レベルの丁寧さを備えています。

ただし、尊敬語と謙譲語が同時に含まれるため、目上の人に対して使うと不自然に感じられる場合もあります。これは、敬語の方向性(自分を下げるのか、相手を上げるのか)が混ざることで、受け手が違和感を覚えるためです。

ビジネスメールでのニュアンス

ビジネスメールでこの表現を使う場合、事前の注意喚起や重要情報の共有といったシーンで効果を発揮します。例えば「会議日程の変更」「システムメンテナンスの案内」などです。

一方で、謝罪やクレーム対応の場面では、命令的に感じられる恐れがあるため避けたほうが無難です。
まるで「頭の片隅に貼り紙をしておいてください」と言うような響きがあり、事務的・フォーマルな場面には適していますが、感情的な配慮を求められる場面には向きません。

このため、「ご承知おきの程よろしくお願い致します」は万能敬語ではなく、使用範囲が限られたツールだと覚えておくと安全です。

正しい使い方と注意点

この章では、「ご承知おきの程よろしくお願い致します」を使うべき場面と避けるべき場面、さらに相手に与える印象や業界別の適切度について詳しく解説します。
丁寧さを意識して使っていても、場面や相手によっては逆効果になることがあるため、判断基準をしっかり持つことが大切です。

使ってよい場面・避けるべき場面

場面使えるかどうか理由
社内の情報共有同僚や部下への案内では、適度な丁寧さと簡潔さが両立できるため
信頼関係のある取引先長期的な取引で関係が築けている場合は、事務的な連絡として適切
重要な社内通達や公的文書フォーマルな文章に合う敬語構造のため
目上の人・上司への連絡敬語の方向性が混ざるため、上から目線と感じられる可能性がある
謝罪やクレーム対応×命令的ニュアンスを含むため、誠意が十分に伝わらない恐れがある

ポイントは「この表現は通知・案内に強く、謝罪・依頼には弱い」という特性を理解することです。

相手に与える印象とマナー上の配慮

適切な場面で使えば「丁寧で配慮がある」と受け取られますが、不適切な場面では「冷たい」「威圧的」と感じられる危険もあります。
まるで会議室の壁に「注意事項」と貼り出すように、距離を保った伝え方になるため、相手の感情や関係性をよく考慮する必要があります。

  • ポジティブ印象:責任感があり、事前共有を欠かさない人物と評価される
  • ネガティブ印象:形式的すぎて親しみがない、または上から指示しているように感じられる

マナーとしては、メール全体のトーンと合うか、相手の立場や状況に適しているかを確認してから使うと安全です。

職種・業界別の適切度

業界・職種適切度解説
金融・保険フォーマルさが求められるため、案内文に適する
製造業品質・安全管理の通知で有効
IT・技術系システム案内に使えるが、カジュアル文化の企業では硬すぎる可能性
サービス業中〜低顧客との距離感を重視する業態では柔らかい言い回しが好まれる
医療・福祉制度変更や公式案内には使えるが、患者向けには平易な表現が望ましい
外資系企業直接的・簡潔な英語的コミュニケーションが好まれる

「業界文化」と「相手の属性」をダブルで考慮することが、誤解を避ける最大のコツです。

使用例で学ぶ敬語運用

この章では、「ご承知おきの程よろしくお願い致します」の実際の使い方を、社内メール・社外メール・公的文書の3つのケースで紹介します。
具体的な文例を見ることで、文章全体のトーンや前後関係の作り方、付け加えるべき配慮のポイントが分かります。

社内メール例文

社内での連絡は、過度にかしこまりすぎず、それでいて事務的な正確さを保つことが大切です。

件名○○システムメンテナンスのご案内
本文○○部 各位
お疲れ様です。
システム管理部の△△です。

下記の通りシステムメンテナンスを実施いたしますので、ご承知おきの程よろしくお願い致します

【日時】8月20日(水)22:00~23:00
【影響範囲】全社共通システムが一時利用不可

作業完了後に再度ご連絡申し上げます。何卒よろしくお願いいたします。
※急なご案内となり申し訳ございませんが、ご対応のほどお願いいたします。

社外メール例文

社外向けは、会社の印象を左右するためフォーマルかつ明確であることが重要です。

件名【ご案内】製品バージョンアップのお知らせ
本文株式会社○○ ご担当者様

平素より大変お世話になっております。
○○株式会社 営業部の□□でございます。

このたび弊社製品のバージョンアップを下記のとおり実施いたしますので、ご承知おきの程よろしくお願い致します

【実施日時】9月1日(月)10:00~12:00
【改善内容】
– セキュリティ機能の強化
– 操作画面のユーザービリティ向上

お客様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

公的文書・案内状での使用例

公的文書では、よりかしこまった書き出しや結びを用い、案内文としての格を保ちます。

本文例株式会社○○ 関係各位

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、令和○年○月○日に予定しております定時株主総会の会場変更について、下記のとおりご通知申し上げます。

【変更前】○○ホテル宴会場A
【変更後】○○ホテル宴会場B

ご多用のところ恐縮ではございますが、ご承知おきの程よろしくお願い致します
敬具

―――――――――――――――――
総務部 株主総会事務局

このように、同じフレーズでも社内・社外・公的文書で周辺の文章構造や敬語の重ね方が変わります。
メールや案内文は「状況」「相手」「目的」の三点セットで調整することが、プロの文章運用です。

代替表現・言い換えフレーズ集

この章では、「ご承知おきの程よろしくお願い致します」の代わりに使える表現を、柔らかさ・簡潔さ・フォーマル度の3つの軸で整理してご紹介します。
状況や相手との関係に応じて言い換えることで、より自然で好印象な文章になります。

より柔らかい印象を与える表現

カジュアルな場面や、相手との距離感を縮めたい場合に有効です。まるで口調を「角の取れた石」に変えるように、やわらかい響きになります。

表現ニュアンス
お含みおきいただけますと幸いですやんわりとした理解のお願い
ご一読いただければ幸いです軽い確認依頼
ご参照いただけますようお願い申し上げます必要なときに確認してほしいニュアンス

「幸いです」で締めると、受け手に心理的な柔らかさを与えやすくなります

より簡潔な表現

時間が限られている相手や、事務的な連絡でスピード重視の場合におすすめです。

表現ニュアンス
ご確認ください最もシンプルで即時性がある
ご留意ください注意喚起の意味合いが強い
ご対応お願いいたします行動を求める直接的な依頼

注意点として、簡潔すぎる表現は冷たく感じられる場合があるため、必要に応じて前置き文を加えると良いでしょう。

フォーマル度を上げる表現

公式な文書や目上の相手、重要な取引先への案内などで使います。
まるで「正装して挨拶する」ような、格式高い印象を与えます。

表現ニュアンス
ご理解賜りますようお願い申し上げます相手への最大限の敬意を含む
ご認識賜りますよう伏してお願い申し上げます事実の把握を強くお願いする
ご高察のほどお願い申し上げます深い理解・推察を求める高敬語

フォーマル表現は、文章全体のトーンを合わせることが必須です。前後がカジュアルだと違和感が出ます。

海外とのやり取りでの参考

この章では、「ご承知おきの程よろしくお願い致します」を海外のビジネスシーンで伝える場合の英語表現や、直訳の注意点、そしてグローバルマナーとの違いについて解説します。
国際的なやり取りでは、日本語特有の敬語のニュアンスがそのまま通じないことが多く、文化背景を理解したうえで表現を選ぶことが重要です。

英語で近いニュアンスの表現

英語で同等の意味を伝える場合、直訳ではなく、状況に応じた自然なフレーズを選びます。

英語表現意味・ニュアンス
Please be advised that…フォーマルな通知文での定番表現
Kindly note that…柔らかく注意喚起をする表現
We would appreciate your acknowledgment of…確認や了承を求める丁寧な依頼

「Kindly note」や「Please be advised」は、通知や案内メールに最も近いニュアンスです。

直訳の注意点

「ご承知おきの程よろしくお願い致します」を直訳して “Please keep it in your mind” のようにすると、英語では命令的で不自然に響くことがあります。
英語圏では、相手に行動を求める際は命令形よりも依頼形を使い、配慮を示すことが一般的です。

  • 直訳よりも「相手にどうしてほしいのか」を明確にする
  • 文章全体のトーンを柔らかくする
  • 文化的背景を考慮した語彙選びを心がける

グローバルビジネスマナーとの違い

日本語敬語は、上下関係や相手への敬意を言葉の形で示すのが特徴です。
一方、英語圏では明確で簡潔な情報伝達が優先されるため、回りくどい表現は避けられることが多いです。

文化特徴ビジネスメール傾向
日本敬語で立場を明確化、間接的表現が好まれる長めの挨拶や背景説明を加える
英語圏フラットな関係性、直接的表現が好まれる要点を簡潔に伝える

例えば、日本の「お世話になっております」にあたる定型文は英語には存在せず、メール冒頭から本題に入ることが多いです。
海外相手には、敬語の形式よりも情報の明確さと配慮のバランスを意識しましょう。